二液性熱伝導ゲルによる高性能電子機器の放熱ソリューション
二液性熱伝導ゲルが次世代電子機器の放熱材料として注目される理由
AIサーバー、高性能GPU、車載電子機器、エネルギー貯蔵システム、産業機器など、近年の電子機器は小型化・高集積化・高出力化が急速に進んでいます。それに伴い、効率的な放熱設計は製品性能だけでなく、信頼性や耐久性を左右する重要な設計要素となっています。
電子機器の熱設計において、熱源とヒートシンクの間に存在するわずかな隙間をいかに低熱抵抗で埋めるかは、放熱性能を決定づける重要なポイントです。この課題を解決するために使用されるのが熱インターフェース材料(TIM:Thermal Interface Material)です。
近年では、従来の熱伝導グリスや熱伝導シートに代わり、優れたギャップ充填性と長期信頼性を兼ね備えた二液性熱伝導ゲルが、多くの電子機器メーカーから採用されるようになっています。
熱インターフェース材料(TIM)が果たす役割
精密加工されたヒートシンクや半導体パッケージであっても、接触面には微細な凹凸が存在します。この凹凸によって空気層が形成されると、熱抵抗が増加し、熱が効率良く伝達されません。
空気の熱伝導率は約0.026W/m・Kと極めて低いため、接触界面の空隙を埋めるTIMの性能が放熱効率を大きく左右します。
現在広く使用されているTIMには、以下のような種類があります。
- 熱伝導グリス
- 熱伝導シート
- 相変化材料(PCM)
- 熱伝導パテ
- 熱伝導ゲル
それぞれに適した用途がありますが、高出力化が進む現在では、放熱性能だけでなく、製造性や長期信頼性も重要な評価項目となっています。
従来の放熱材料が抱える課題
熱伝導グリス
熱伝導グリスは接触熱抵抗が低く、CPUやGPUなどの冷却用途で広く使用されています。しかし、長期間の温度変化を繰り返す環境では、ポンプアウト現象やオイルブリードが発生する可能性があります。
これらの現象は界面の熱抵抗増加につながり、長期的には放熱性能の低下を招く要因となります。また、塗布量のばらつきによって品質管理が難しくなるケースもあります。
熱伝導シート
熱伝導シートは一定の厚みを持ち、組立工程で取り扱いやすいというメリットがあります。そのため量産性に優れ、多くの電子機器で採用されています。
一方で、部品高さにばらつきがある場合や複雑な三次元形状では十分に密着できず、局所的な空隙が生じることがあります。また、過度な圧縮荷重が電子部品へ機械的ストレスを与える場合もあります。
二液性熱伝導ゲルが選ばれる理由
二液性熱伝導ゲルは、A剤とB剤を一定比率で混合・吐出し、硬化後に柔軟なシリコーンエラストマーを形成する放熱材料です。
未硬化状態では優れた流動性を有し、接触面の微細な凹凸や部品間の隙間へ均一に充填されます。硬化後は柔軟性を維持したまま安定した熱伝導経路を形成するため、長期間にわたり安定した放熱性能を実現します。
優れたギャップ充填性
熱伝導ゲルは液状で塗布されるため、熱伝導シートでは追従しにくい複雑な形状や段差にも高い追従性を発揮します。
空気層を最小限に抑えることで、界面熱抵抗を低減し、高効率な熱伝達を可能にします。
長期信頼性の向上
硬化後は柔軟なシリコーンゲルとなるため、熱サイクルによるポンプアウトを抑制し、長期間にわたり安定した熱抵抗を維持できます。
保守が困難な産業機器や車載電子機器においても、高い信頼性が期待できます。
電子部品への応力を低減
近年の半導体パッケージは薄型化・大型化が進み、外部応力に対して非常に敏感になっています。
熱伝導ゲルは柔軟性を持つため、熱膨張差や振動を吸収しながら放熱性能を維持し、はんだ接合部や基板への機械的負荷を軽減します。
熱伝導材料の比較
| 比較項目 | 熱伝導グリス | 熱伝導シート | 二液性熱伝導ゲル |
|---|---|---|---|
| 熱伝導性能 | ◎ | ○ | ◎ |
| ギャップ充填性 | ◎ | △ | ◎ |
| ポンプアウト耐性 | △ | ◎ | ◎ |
| 複雑形状への追従性 | ○ | △ | ◎ |
| 自動ディスペンス対応 | ○ | × | ◎ |
| 長期信頼性 | △ | ○ | ◎ |
TOUSEN 二液性熱伝導ゲルシリーズ
高発熱デバイスの熱設計では、優れた熱伝導率だけでなく、ディスペンス性、長期信頼性、絶縁性能、および量産時の工程安定性も重要な評価項目です。
TOUSEN 二液性熱伝導ゲルシリーズは、このような市場ニーズに対応するために開発された高性能TIM(熱インターフェース材料)です。二液混合方式を採用することで、複雑な形状や高さの異なる部品間にも均一に充填でき、硬化後は柔軟なシリコーンエラストマーとして安定した放熱性能を維持します。
また、自動ディスペンサーによる塗布工程にも対応しており、生産効率の向上と品質の均一化にも貢献します。高出力電子機器における放熱設計と製造プロセスの両面から、信頼性向上をサポートします。
製品ラインアップについては、以下をご覧ください。
代表的な製品仕様
| 項目 | 代表値 |
|---|---|
| 製品タイプ | 二液性シリコーン熱伝導ゲル |
| 混合比 | 1:1 |
| 熱伝導率 | 最大8.0 W/m・K |
| 硬度 | Shore 00 55±10 |
| 最小接着厚み | 0.17 mm |
| 絶縁破壊電圧 | 6 kV/mm以上 |
| 使用温度範囲 | -50℃~150℃ |
| 難燃性 | UL94 V-0 |
| 環境対応 | RoHS・REACH対応、ハロゲンフリー |
これらの特性により、TOUSENの熱伝導ゲルは、高い放熱性能と電気絶縁性を両立しながら、長期にわたり安定した熱マネジメントを実現します。
熱伝導ゲルの主な採用分野
AIサーバー・高性能コンピューティング(HPC)
GPUやAIアクセラレーターは非常に高い発熱密度を持ち、従来以上に高性能なTIMが求められています。熱伝導ゲルは複数チップや大型ヒートスプレッダにも均一に追従し、長時間運転時でも安定した放熱性能を維持します。
車載電子機器
EVやHEVでは、ECU、BMS、OBC、DC-DCコンバーターなど、多数の電子制御ユニットが搭載されています。これらは振動や急激な温度変化にさらされるため、長期信頼性に優れた熱伝導ゲルが適しています。
パワーモジュール
IGBT、MOSFET、SiCモジュールなどでは、熱膨張差による応力が問題となる場合があります。柔軟性を有する熱伝導ゲルは、熱抵抗を抑えながら部品への応力も低減できます。
蓄電システム
蓄電池モジュールやバッテリーパックでは、均一な温度管理がセル寿命や安全性に大きく影響します。熱伝導ゲルは冷却プレートとの熱伝達効率を向上させ、システム全体の温度均一化に貢献します。
産業機器・通信設備
産業用制御装置、5G通信設備、光通信機器などは24時間連続稼働するケースが多く、高い耐久性が要求されます。硬化後も柔軟性を維持する熱伝導ゲルは、長期間安定した放熱性能を提供します。
熱伝導ゲルを選定する際のポイント
熱伝導率は重要な指標ですが、それだけで最適なTIMを判断することはできません。
実際の設計では、以下の項目を総合的に評価することが重要です。
- 熱伝導率
- ディスペンス性
- 粘度および流動性
- 硬化条件
- ギャップ充填性
- 柔軟性
- 絶縁性能
- 耐熱サイクル性
- 耐ポンプアウト性
- 長期信頼性
- 自動塗布設備との適合性
- RoHS・REACHなどの環境規制への適合
これらの要素を総合的に評価することで、実際の使用環境に適した熱伝導ゲルを選定し、電子機器全体の信頼性向上につなげることができます。
よくあるご質問(FAQ)
熱伝導ゲルは熱伝導グリスより優れていますか?
用途によって異なります。熱伝導グリスは初期の熱抵抗が低い一方で、長期間使用するとポンプアウトやオイルブリードが発生する可能性があります。長期安定性を重視する用途では、二液性熱伝導ゲルが有効な選択肢となります。
熱伝導ゲルは熱伝導シートの代替になりますか?
部品高さにばらつきがある場合や複雑な形状では、熱伝導ゲルの方が高い追従性を発揮します。一方、一定厚みが必要な用途では熱伝導シートが適している場合もあります。
どのような用途で採用されていますか?
AIサーバー、車載電子機器、パワーモジュール、通信設備、産業機器、エネルギー貯蔵システムなど、高い放熱性能と長期信頼性が求められる幅広い分野で採用が進んでいます。
まとめ
電子機器の高性能化が進む現在、TIMには単なる熱伝導率だけではなく、長期信頼性、量産性、機械的追従性、環境耐久性など、多面的な性能が求められています。
二液性熱伝導ゲルは、熱伝導グリスの優れた密着性と熱伝導シートの安定性を兼ね備えた放熱材料として、高発熱デバイス向けの有力なソリューションとなっています。ギャップ充填性、低応力、耐ポンプアウト性、自動ディスペンス対応などの特長により、電子機器の長期的な放熱性能と信頼性の向上に貢献します。
TOUSEN Thermal Gel Seriesは、AIサーバー、車載電子機器、産業機器、通信機器、パワーモジュール、蓄電システムなど、さまざまな高性能電子機器向けに最適化された熱インターフェース材料です。設計から量産まで、一貫した熱マネジメントソリューションをご提供します。
製品の詳細につきましては、以下のページをご覧ください。
サーマルペーストのチキソトロピー性と熱性能への影響をエンジニア視点で徹底解説する技術ガイドと選定方法
単一成分サーマルゲルによる高性能電子機器の熱対策技術
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