AI時代の車載エレクトロニクス向けサーマルペースト
AI時代の車載エレクトロニクスにおけるサーマルペーストの重要性
AI技術の急速な普及により、自動車の電子システムは大きく変化しています。ADAS(先進運転支援システム)、自動運転関連システム、インテリジェントコックピット、車載通信システム、統合型コンピューティングプラットフォームなど、高い演算能力を必要とする機能が車両に搭載されるようになりました。
演算性能の向上に伴い、車載半導体から発生する熱量も増加しています。特にAIプロセッサ、GPU、NPU、高性能SoC、パワー半導体などでは、限られたスペースの中で効率的に熱を逃がすことが重要です。そのため、ヒートシンクや筐体だけでなく、発熱部品と冷却部品の間に配置されるサーマルペーストや放熱グリースなどの熱界面材料(TIM)にも注目が集まっています。
AI搭載車両で熱対策が重要になる理由
AIを利用した車載システムでは、従来の電子制御システムと比較して、より高い演算処理能力が求められます。AIによる画像認識、センサー情報の処理、周辺環境の解析、リアルタイム制御などを継続的に行う場合、プロセッサの消費電力と発熱量は無視できません。
一方、車載ECUやコンピューティングユニットは、限られた筐体内部に多数の電子部品を集積する必要があります。さらに、車両では振動、温度変化、長時間の連続運転など、一般的な民生機器とは異なる使用環境が想定されます。
このような条件では、発熱源からヒートシンクや筐体へ熱を効率的に移動させる熱経路を設計することが重要です。そこでサーマルペーストが使用されます。
半導体パッケージや金属製ヒートシンクの表面は、肉眼では平滑に見えても、微細な凹凸があります。部品同士を直接接触させた場合、その微細な隙間には空気が残り、熱移動を妨げる可能性があります。サーマルペーストはこうした微細な隙間を充填し、熱源と冷却部品の間に効率的な熱伝導経路を形成する役割を担います。
サーマルペーストと放熱グリースの選定で重要なポイント
日本の電子機器業界では、サーマルペースト、放熱グリース、熱伝導グリースなどの呼称が用途やメーカーによって使い分けられています。いずれの場合も、単純に「熱伝導率が高い材料」を選べばよいわけではありません。
実際のアプリケーションでは、材料の熱伝導率に加えて、熱抵抗、粘度、濡れ性、塗布性、塗布厚、ポンプアウト特性、温度サイクルに対する安定性、電気絶縁性、周辺材料との適合性などを総合的に評価する必要があります。
特に車載用途では、製造工程との適合性も重要です。自動塗布・ディスペンス装置を使用する場合、材料の粘度や流動特性が安定していなければ、塗布量や塗布形状にばらつきが発生する可能性があります。
そのため、エンジニアの視点では、カタログ上の熱伝導率だけではなく、実際の組立条件における熱抵抗と長期信頼性を確認することが重要です。
車載AIシステムにおけるサーマルペーストの主な用途
AI技術の導入が進むにつれて、サーマルペーストの用途も広がっています。代表的な対象として、AIコンピューティングユニット、ADASコントローラ、高性能SoC、車載GPU、通信モジュール、各種パワーエレクトロニクスなどが挙げられます。
AIコンピューティングユニットでは、高負荷処理が長時間続く可能性があります。プロセッサ温度が過度に上昇すると、性能制御やシステムの安定性に影響する場合があります。そのため、発熱部品から冷却構造への熱移動を安定させることが、システム設計上の重要な課題となります。
また、MOSFET、IGBTなどのパワー半導体も重要な熱源です。電力変換やスイッチング動作によって発生した熱を効率的に放散するため、デバイスとヒートシンクの間に放熱グリースやサーマルペーストを使用する設計があります。
熱伝導ゲルが適しているケース
すべての車載電子機器にサーマルペーストや放熱グリースが適しているとは限りません。発熱部品と冷却部品の間に比較的大きな隙間がある場合や、部品高さにばらつきがある場合には、より柔軟な熱界面材料が求められます。
このような用途では熱伝導ゲルが選択肢となります。熱伝導ゲルは、部品間の微細な凹凸だけでなく、一定のギャップや高さ公差にも対応しやすいという特徴があります。
したがって、材料選定では、サーマルペースト、放熱グリース、熱伝導ゲルを単純に優劣で比較するのではなく、熱源の形状、ギャップ寸法、必要な熱抵抗、組立工程、機械的応力、長期信頼性などを踏まえて判断する必要があります。
比較的薄く均一な界面にはサーマルペーストが適している場合があり、特定の塗布条件や界面特性が求められる場合には放熱グリースが有効です。一方、ギャップ吸収性や柔軟性が重要な設計では熱伝導ゲルが適した選択肢となる場合があります。
車載熱対策向けTOUSEN TSAS50
車載エレクトロニクスやパワーエレクトロニクスの熱対策を検討するメーカーに向けて、TOUSENではTSAS50サーマルペーストを提供しています。
TSAS50 Thermal Pasteは、発熱する電子部品と冷却構造の間に熱伝導経路を形成する熱界面材料として、各種電子機器の熱マネジメント用途に検討できる製品です。
実際の車載用途では、材料単体の性能だけで判断するのではなく、半導体パッケージ、ヒートシンクの表面状態、塗布方法、塗布量、界面厚さ、使用温度などを組み合わせて評価することが重要です。
特に自動車分野では、初期の熱性能だけでなく、長期間の使用を想定した信頼性評価が不可欠です。温度サイクル、振動、経時変化、材料の移動、周辺部材との適合性などを含めて評価することで、より実用的なサーマルペーストの選定につながります。
エンジニアが熱界面材料を選定する際の考え方
熱界面材料を選ぶ際には、まず材料そのものではなく、システム全体の熱設計を確認することが重要です。
第一に、対象部品の発熱量と冷却経路を把握します。第二に、発熱部品とヒートシンクの接触状態、ギャップ、許容界面厚、組立圧力などを確認します。そのうえで、サーマルペースト、放熱グリース、熱伝導ゲルなどの候補材料を比較します。
評価では、熱伝導率だけでなく、実際の組立状態における熱抵抗を確認することが重要です。また、量産工程ではディスペンス性、塗布再現性、材料の保管安定性なども評価対象になります。
さらに車載用途では、温度サイクルや振動などを想定した信頼性試験を実施する必要があります。初期性能が優れていても、長期使用によって界面状態が変化すれば、実機での熱性能に影響する可能性があります。
AI時代の車載熱マネジメント
今後、AIを搭載した車両では、演算性能の向上と電子部品の高密度化がさらに進むと考えられます。それに伴い、限られたスペースで発生する熱を効率的に処理するための熱マネジメント技術がより重要になります。
サーマルペーストや放熱グリースは、低い界面熱抵抗と効率的な熱伝導が求められる用途で引き続き重要な役割を担うと考えられます。一方、ギャップ吸収性や柔軟性が必要な用途では熱伝導ゲルの活用も期待されます。
重要なのは、すべての用途に対して同じ熱伝導材料を適用するのではなく、発熱量、接触構造、ギャップ、製造工程、使用環境、信頼性要求を総合的に判断することです。
AI時代の車載エレクトロニクスでは、プロセッサやパワー半導体そのものの性能だけでなく、それらが発生する熱をどのように制御するかがシステムの安定性と信頼性を左右します。適切な熱界面材料を選定し、実機条件に基づいた評価を行うことが、次世代車載電子システムの熱設計において重要なポイントとなります。
車載エレクトロニクス向けの熱対策材料を検討する際には、TOUSENのTSAS50サーマルペーストも候補材料の一つとして評価することができます。
AIサーバーとCPU GPUの熱対策にサーマルペーストが重要な理由
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